スペインは一つの国ですが、独自の歴史や言語を持つ自治体の集まりでもあります。
その風土の違いや、気候の違いなどにもより、チーズも様々なタイプのものが作られています。
日本では専門店でしかお目にかかれないスペインチーズ、どんなところで作られ、どんな特徴があるんでしょうか?
スペインチーズってどんなもの?
スペインでは牛・山羊・羊、または2~3種ミルクを混合したものの4種類が作られています。
牛乳はスペインチーズを作るために最も多く使われています。
牛は山羊や羊の搾乳量の10倍以上と言う理由がメインなのですが、スペインのサンティアゴ・コンポステーラでは15種以上の牛が飼育されていると言われていますので、牛の種類の多さもその要因の一つなのかもしれません。
牛の種の多さはチーズのバラエティを豊富にし、各地域でのチーズの特色を個性的なものにしています。
牛乳チーズで有名なものは、ガリシア地方で作られるテティージャ、バレアレス諸島メノルカ島で作られるマオンがあります。
また、スペインでは12世紀から19世紀にかけて、羊毛の生産が盛んで輸出量も非常に多い国でした。
しかし、合成繊維の普及によって羊毛業が衰退、羊毛用に飼育されていた原産種の多くが、乳製品生産へと移行していったんです。
そのため、羊乳チーズの生産が増え、今ではその優れた品質から世界中で高い評価を受けるようになりました。
羊乳は、ビタミンやカルシウムを多く含んでいて、羊乳から作られるチーズはほとんどの場合がセミソフトで、なめらかな食感が特徴です。
ラマンチャ地方で作られるマンチェゴ、ナバラで作られるイディアサバル、エストレマドゥーラのトルタ・デル・カサールなどが羊から作られたチーズです。
断崖絶壁をも軽々と登る山羊は、山岳部や乾燥地帯でも生息できる強靭な性質を持っています。
ピレネー山脈、カンタブリア山脈・シエラネバダ山脈など山岳地帯も多く、乾燥した気候の地中海にも面したスペインでは、山羊も多く飼育されています。
カナリア諸島のマホレロ、ムルシア地方で作られるムルシアが有名です。
スペインの地域とミルクの関係
スペインは地域ごとに気候や地形も異なるので、地域ごとに家畜の種類が変わってきます。それによって、作られるチーズも変わってくるんですね。
カンタブリアの山岳地帯は涼しく、降雨量の多い地域で「緑のスペイン」と呼ばれるほど、美しい緑の風景が広がっています。
ここでは主に、牛乳のチーズが生産されています。
サンティアゴ・コンポステーラは巡礼地としても有名で、そのチーズは巡礼者によって広く知られるようになりました。
北部のカンタブリア山脈地域では、洞窟で熟成された青かびチーズが有名です。海からの湿った空気と、洞窟内の湿度や温度が独特の風味を作り出します。
ピレネー山脈のあるカタルーニャ州では山羊のチーズが有名で、クレウス岬からタリファまでの海岸線には山羊が、半島の中心には羊が多く飼育されています。
地中海沿岸は温暖で乾燥した地域で、山羊チーズが多く作られています。
バスク地方とナバラは羊にとって理想的な飼育環境です。
スペインチーズの生産量と消費量
スペインチーズは、日本でもまだメジャーではありませんよね?
実は、スペイン国内での一人当たりの年間チーズ消費量は、他のヨーロッパの地域とはかけ離れて低いんです。
チーズの平均消費量は年々増加してはいますが、ヨーロッパ水準にはまだまだ及びません。
その中でも、比較的チーズの消費量が多いのは、カナリア諸島、ムルシア、バレンシア、アストゥリアス地方で、有名チーズが作られている地域での消費は高いようです。
生産量が少ないスペインチーズなので、ほとんどが国内で消費されるため、海外にあまり出回らないんですね。
生産量、消費量とも世界ランキングの20位以下なスペインですが、チーズの輸入量に関しては10位以内にランキングしているんです。
スペイン国内で最も消費されるチーズはフレッシュチーズです。
スペインではチーズをそのまま味わうのではなく、パンと一緒に食べるなどして食卓に上がることが多いですよ。