現代の食に欠かせない存在となったチーズ。
日本の食卓にもよく登場するようになりましたね。
日本の乳製品の歴史は7世紀頃に始まります。中国からの渡来人が牛乳と乳製品についての知識をもたらしたと言われています。
そんな私たちの食卓に色どりを添えるチーズ、一体どこでどのようにして作られたのが最初なのでしょうか?
チーズの歴史をさかのぼり、私たちの先祖とチーズの出会いをご紹介いたします。
歴史を知れば、チーズの味も少し違ってくるかもしれませんよ。
乳製品と私たちの出会い~チーズが最初に作られたのは?
人と乳製品の歴史は古く、発掘記録では土器などに残った成分の分析から、紀元前7000年の頃から食べられていたことがわかりました。
文献に残っている最古のものは紀元前1200年ごろ。旧約聖書にも「カード(乳を固めたもの)」という記述があるんです。
私たちの祖先が狩猟から農耕に移ったのが、いまから1万年以上も前のこと。
それから約1000年後、狩猟によって獲得していた肉を確実に手に入れるために、野生動物を飼育するようになりました。
ご先祖様が考えたのは、野生動物の飼いやすさ。野生動物を家畜化するにあたって、家畜として扱いやすい動物を選別していきました。
人に慣れやすい・群れを作りやすい・食べ物が人と同じようなものではない・食肉として以外の利用方法があるなどの特性によって、野生動物が選ばれました。
最初に選ばれたのが羊とヤギ、次に牛が選ばれて家畜化が行われていきます。
ここで注目すべきことは、羊・山羊・牛共に搾乳ができるということです。
このような野生動物の家畜化は、メソポタミア地域で最初に行われ、食肉としては紀元前6500年ごろ、乳の利用は紀元前5500年ごろにさかのぼるようです。
人類最初の乳製品って?
乳製品の原点は、乳に含まれる脂肪とたんぱく質を効率よく取ることでした。
乳成分の中で脂肪を集めた加工品が「バター」、たんぱく質を集めた加工品が「チーズ」になりました。
現在ある様々なチーズは、乳の種類によって性質が異なるたんぱく質を高度に利用したものなんですね。
文献で見るチーズの歴史
世界最古の記録書「ギルガメッシュ叙事詩」には、「青玉石の入れ物にバターを満たした」という記述があります。なんかとても高級そうですね。
また、ヒンドゥ教の経典にも牛乳やバターという記述があります。インドでもこの頃から広く乳製品が普及していたんですね。これが、紀元前1200年頃。
紀元前500年ごろ、旧約聖書「創世記」に書かれたアブラハムのくだりでは、カードを神の使者へ供えるというような記述も見られます。
モーゼの出エジプト記に続く出来事なので、紀元前1300年にはカードが存在していたのではないでしょうか?
西アジアから広がるチーズ文化
メソポタミア地域(西アジア)から生まれたチーズの文化は、交易などによって各地へと広がっていきます。
その文化は主に東と西の2方向に広がり定着していきます。
チーズ文化が伝わった地域でも、その風土や環境によって定着しなかった地域も存在します。
西ルートで広がったヨーロッパのチーズ文化
メソポタミアから西側へ行くには、トルコを通過しなければなりません。
そのころトルコではヒッタイト文明が繁栄しており、酵素を使って乳を固める技術は、ヒッタイト文明との融合で出来上がっていったとされています。
地中海に伸びたルートは、イタリア先住民やケルト人などの文明と結びつき、牛の乳を加工する技術、長期保存ができるチーズを作る技術へと発展していきました。
東ヨーロッパはローマ帝国が進出しなかった地域で、乳加工の技術が伝わるのが遅かったとされています。しかし、地中海以外の地域でも紀元前からバターや古代チーズの存在が記述されています。
アフリカへもチーズ文化は伝わったのですが、エジプト王朝が乳加工を取り入れなかったため、乳製品を作る技術は定着しませんでした。
ごく少数の民族では、独自の乳加工を行っていて、現在でもその独特の加工技術を残しています。
東ルートで広がったアジアのチーズ文化
紀元前1000年頃成立したインド文明は、ヒッタイト文明とに接点がありませんでした。また、ヒンドゥの牛信仰などの影響から、西側とは異なる酸性化凝乳加工のみが行われていました。
あまり保存性を必要しなかったので、フレッシュチーズなどが定着していきます。
カザフスタン地域に広がったチーズは遊牧民の文化と融合し、羊とヤギの酸性化凝乳加工が主に行われていました。
このように東ルート、いわゆるシルクロードを通って伝わったチーズ文化は、古代中国へも広がり、日本にもなら・平安時代には「蘇」として存在しました。
江戸時代にはインドから牛を3頭輸入し繁殖させ、チーズのようなものを作らせたとの記録もあります。
日本で本格的な酪農が始まったのは明治時代。まだ、日本の酪農文化は日が浅いんですね。
昭和に入ってからは大手乳業企業が、ナチュラルチーズとプロセスチーズの生産を始めます。
東京オリンピックからは、海外からのチーズの輸入が始まり、様々なタイプのチーズが家庭でも楽しめるようになったんです。