チーズの原料になるミルクは、牛・山羊・羊の3種類です。
最も多く使われているのが牛乳。日本でもおなじみですよね。
私たちのご先祖様が野生動物を家畜にした歴史は、羊、山羊、豚、牛の順になります。
そう考えると、牛乳を使って作られるチーズよりも、羊、山羊の方が歴史は古いんですね。
今回はチーズの主原料、3つのミルクの大まかな違いなどを見ていきましょう。
チーズの主原料ミルクの違いって何?
日本のスーパーで市販されているほとんどのチーズは、牛乳が主原料になっていますよね。
現在、世界各国でも最も多く使われているのが牛乳です。
チーズの専門店に行くと、羊や山羊のチーズも取り揃えてあって、国産の羊や山羊のチーズも販売されるようになりましたね。
欧米では、3種類のミルクをブレンドして作られたチーズも多く販売されています。
羊乳・山羊乳・牛乳の成分表
総固形分(%) | たんぱく質(%) | 脂肪(%) | カルシウム(g/l) | カロリー(kcal) | |
羊乳 | 18.2 | 4.3 | 8.4 | 1.90 | 108 |
山羊乳 | 11.2 | 2.9 | 3.9 | 1.23 | 69 |
牛乳 | 12.1 | 3.4 | 3.5 | 1.20 | 69 |
参照:公益社団法人畜産技術協議会
最も歴史の古いチーズの原料:羊のミルク
私たちの祖先は、狩猟から農耕に移る過程で、野生動物を家畜化することを考えました。
野生動物の家畜化はメソポタミア地域で最初に行われ、食肉としては紀元前6500年ごろ、乳の利用は紀元前5500年ごろだと言われています。
その中でも、犬を除けば一番古いのが羊。羊のミルクは紀元前5500年から食卓に上っていたんですね。

日本でも有名なフランスの青かびチーズ「ロックフォール」、この高級チーズはラ・コーヌ種という羊のミルクから作られています。
イタリアの「ペコリーノ」、ギリシャの「フェタ」も有名ですね。
スペインでは、バスク地方ピレネー山脈の農場を筆頭に、各地で羊乳を使ったチーズが作られています。
上の乳成分表を見てお分かりの通り、羊乳は栄養が豊富。このほかにもビタミンやミネラルも、牛乳の1.5~2倍も含まれているんです。
固形分・脂肪分も高く、出来上がったチーズは濃厚。ほんのりと甘いのが特徴です。
でも、乳糖含有量は山羊・牛乳とそんなに変わらないんですね。
もろもろとした独特の口当たり:山羊のミルク
山羊のチーズは小ぶりなものばかりですよね?
そして、もろもろとした独特の口当たり。
これは、山羊ミルクのカゼインの構造が、他の2つのミルクと異なっているからなんです。
山羊チーズを作る過程では、乳酸発酵を進めて㏗を下げることがメインで凝集させていきます。
低い㏗では、カードとホエイの分離ができないため、このような独特の口当たりになるんですね。
また山羊のチーズは独特のにおいがあり、栄養価も高く脂肪球が牛乳より小さいため、消化吸収がスムーズに行われます。
チーズ作りで最も使われている:牛のミルク
牛のチーズがなぜこんなにもバリエーションが豊富なのかというと、ミルクを絞るまでの工程が羊や山羊に比べて効率がいいためなんです。
山羊や羊の搾乳量の10倍以上も取れるのが、牛乳なんです。
昔はバターを取った後のミルクでチーズが作られていました。
牛乳は脂肪球が大きく、乳脂肪を細かくしないとクリーム分がどんどん浮いてきます。
その浮いてきたクリームからバターが作られ、脂肪分が少なくなった残りのミルクでチーズを作り有効活用していました。
脂肪分がないミルクを「スキムドミルク」と言いますが、このクリーム(脂肪分)をすくう作業をスキミングと呼んでいます。
スキミングされたミルクなので、スキムドミルクと呼ばれているんですね。
牛には様々な品種があって、それぞれに成分が異なります。
このことも色々な個性を持った、沢山のバラエティを生む結果になっています。
チーズを良く見ると、牛乳をメインにして作られたチーズやバターは黄色、山羊や羊のチーズは白色をしています。
この理由は、牛乳にカロテンが含まれているからなんですよ。
その他のチーズの原料になるミルク
お馴染み、南イタリア産のモッツァレラは、水牛から作られます。
羊のミルクと同じで、脂肪分やたんぱく質が高く、チーズ作りには適したミルクです。
真っ白なモッツアレラの原料、水牛のミルクにもカロテンが含まれていないんです。
牛と比べると飼育が難しくミルクの量も少ないので、イタリアでも牛乳を使って製造されることも多くなっています。
世界で一番高価なチーズと言われているのが、セルビアの都市スレムスカ・ミトロヴィィツァで生産されるPuleというチーズ。1キロあたり1,000ユーロもする高級チーズなんです。
このPuleは、ロバの乳を使って作られています。一般的にはロバのミルクはチーズには使用されておらず、化粧品などに加工されて使われていたそうです。
栄養価の高さから海外で注目されているラクダのミルク。欧米では少しずつですが、販売され始めました。
ドバイには、ラクダのミルクを使って作ったチーズも販売されています。
ラクダからチーズを作る試みは以前から繰り返されてきましたが、チーズに適したカードができず製品化されることはありませんでした。
現在では遺伝子組み換えを行って、チーズが作られているそうです。
モンゴルやカザフスタン地方では、馬のミルクを利用されていますが、チーズ作りには適していません。
私たちの祖先が家畜として最初に飼育し始めた羊・山羊・牛は、食肉としてだけでなくその乳の利用ができるという点が面白いですね。